トップページ > 借金コラム > 過払い金の「時効」気になる期限は
過払い金の「時効」気になる期限は
過払い金請求は一度発生したらずっとできるわけではありません。そこには「時効」という概念があり、一定の期間を経過すると消滅してしまうのです。では、過払い金の時効期間について正しく知っておきましょう。
過払い金返還の正式な期限
過払い金返還には時効がありますが、その法的な根拠は何でしょうか。
もともと、過払い金というのは民法上の「不当利得返還請求権」という権利を根拠にして請求できるものです。この条文を平たく言えば、正当な理由もなしに他人に損をさせて自分が利益を受けたらその利益(つまり払い過ぎた利息)は返しなさい、という意味なのです。そして不当利得返還請求権の時効期間は10年とされているのです。
時効期間の経過を算出するにあたっては、起算点というのはとても大切な要素です。どこから数えるかがずれてしまうと権利を争う際に、権利が消滅している、していないという最も重要な点が異なってくるからです。この起算点については従来、個々の過払い金が発生した時点それぞれから時効が始まっているとする説(個別進行説)と、取引全体が完済になった時点から始まるという説(取引終了時説)が対立していました。しかし、平成21年に最高裁判所で出された判決では、取引の終了時点を起算点とするとされました。よって、この点については現在では争いがありません。
何度もお金を借りている場合はどうなる?
非常によく争われる点が「一度完済し、また借りた」というパターンの人はどこから時効を数えはじめるのかということです。もし第一取引が20年前に始まり、15年前に一度完済しているということであればすでにその分の過払金は時効になっているからです。
何度も完済しては再度借入れる、そのような借り方をしている人は非常に多いのですが、しばしば貸金業者側は「取引が分断している」という主張をしてきます。こういったケースで裁判所が判断を下す場合は、それぞれの取引の内容や契約の条件、経緯など色々な要素を考慮しています。また、前後の取引にどのくらいの間隔があるかということによって一個の取引とみるか、それぞれ別の取引とみるかケースバイケースで判断しているようです。
こういった論点には法的な知識を前提とした反論の方法があるのですが、仮に裁判などにもつれ込んだ場合に貸金業者がどういった反撃を展開してくるのかは蓋を開けてみなければわかりません。ですから、もし一般の人がインターネットなどで「訴訟は意外と簡単だった」などの体験談を見て自分でできるかも知れないと思っても、ことはそう単純ではないのです。
完全にプロといえる貸金業者の描いたシナリオ通りに進められてしまって十分な過払い金返還を受けられない危険性もありますので、特に取引が分断している人については法律家の手を借りて請求した方が結果的にはプラスになる可能性が高いのです。
今後過払い金請求が出来なくなるって本当?
一部の大手事務所が「過払い金には時効があります!早くやらなければなくなってしまいます」と煽っているCMもありますが、それらは正確とはいえません。
平成18年に最高裁が貸金業者の高金利を否定する判決を出してから10年が経過しているため、もう過払い金返還は終了するというのが一部の大手事務所の言い分ですが、実際に時効が成立するのは「その取引を完済で終了させてから10年」なのです。もちろん、貸金業法改正で全体的に低金利になったことで徐々に過払い金が発生する状態が消滅していくのは事実ですが、平成18年判決が出た後数年経ってから完済した人であればいまだ時効は成立していないわけです。
このような不正確なCMにより焦って冷静に法律家選びができなくなるというのは問題です。自分の完済から10年が迫っている人はもちろん急がなければならないのですが、正確な知識を与えずに契約をせかす事務所には注意しなくてはなりません。